日本共産党綱領草案

提供: 日本社会主義文献類聚
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  • 日本共産党綱領草案(22年テーゼ)の全文である。この草案はコミンテルンの議長であったブハーリン(1938年没)によって起草され、1923年2月の第2回大会と3月の臨時党大会(いわゆる「石神井大会」)で討議に付されたものの、当面する革命の性質と「君主制廃止」の文言に関して議論がまとまらず、実際には審議未了となったがコミンテルンに対しては原案のまま採択と報告された。
  • 底本:日本共産党中央委員会・編『日本共産党綱領集』日本共産党中央委員会出版部、1962年。
  • 底本の翻訳元:『共産主義インタナショナル綱領問題資料集』(1924年、ハンブルクで刊行)所収の独文テキスト
  • 用字・仮名遣いは底本に従った。底本の訳注は省略した。

 日本共産党は、すべての国ぐにの共産党の共通の諸要求に基礎をおきながらも、日本資本主義の発展の特殊性を考慮に入れなければならない。日本資本主義は、大戦によって他の国ぐにほどはげしい打撃はこうむらなかったので、大戦中に大いに発展をとげたが、それとともに、いまなお以前の封建的諸関係の跡をいちじるしくとどめている。土地のかなり大きな部分が半封建的土地所有者の手中にあり、その最大のものは、日本政府の首長である天皇である。
 その一方、大地主の所有にぞくする広大な土地は、 農民に小作にだされ、農民はそれを自分の農具をもって耕作している。農民の土地飢饉がますますつよまっているため、小作料はたえず騰貴し、いわゆる飢餓小作料の域に達している。封建的諸関係のこういう残存物は、国家権力の構造にいっそう明白にあらわれている。国家権力は、大土地所有者と商工ブルジョアジーの若干部分とのブロックの手ににぎられている。国家権力の半封建的な性格は、貴族院(元老)がきわめて重要な地位を占め、指導的役割をはたしていることにあらわれており、さらに日本国家の憲法全体の性格にもあらわれている。こういう事情のもとにあって、労働者階級、農民、および 小ブルジョアジーばかりでなく、いわゆる自由主義的ブルジョアジーのかなりの部分までが、国家機能を行使する可能性をまったくうばわれて、現政府にたいする反対派となっている。
 資本主義が発展するのにおうじて、自由主義的なブルジョア反対派の政治的要求も高まってゆく。この要求は、普通選挙権と国家権力の民主化との要求に集中されている。他方では、資本主義が力づよく発展していながら、ブルジョア革命がおくれていることは、労働者階級と農民の広範な層をうながして、闘争舞台に進出させている。こうして、これらの人民層は、この国の生活における積極的な政治的要因となりつつある。戦後の時期におこった激烈な経済恐慌は、日本の工業を収縮させることによって、階級闘争と、一般に政治的危機を、異常に激化させた。こういう条件のもとにあっては、社会発展の行程は、おそらく現在の政治体制の革命的転覆に導くであろう。この政治体制に反対して、さまざまな社会勢力と階級とが結集している。しかし、日本におけるブルジョア革命の完成は、強大な労働者階級と小作料の圧迫の廃止を熱望する革命的農民大衆とがすでに存在しているときにおこなわれるので、'ブルジョア革命の完成は、ブルジョア支配の転複とプロレタリア独裁の実現とを目標とするプロレタリア革命の直接の序幕となることができるであろう
 ブロレタリアートの独裁のためにたたかうことをその目標とする日本共産党は、真に現存の政府とたたかう能力をもっているすべての社会勢力を結集する任務をおびている。なぜなら、現政府の転覆は、自己の独裁を目ざす労働者階級の闘争がかならず通過すべき一段階だからである。
 日本共産党は、ブルジョア民主主義の敵であるにもかかわらず、過渡的スローガンとして、天皇の政府の転覆と君主制の廃止というスローガンを採用し、また普通選挙権の実施を要求してたたかわなければならない。党がそうしなければならないのは、日本の革命運動の現在の発展段階にあって利用できる勢力を最大限に結集し、これらの勢力にたいする指導権を自分の手に確保し、こうして、日本プロレタリアートのソビエト権力をめざす将来の闘争への道を切りひらくためである。とくに重要なことは農民の広範な層を利用することであって、農民は、かならずや地主政府にたいしてはげしく反対するようになるであろう。自由主義的ブルジョアや急進的ブルジョアのさまざまなグループのほうでも、農民大衆を自分の味方に獲得することに、つねにつとめるであろう。したがって、共産党は、地主に反対する農民のいっさいの行動を支持し、この運動をあらゆる手段で促進し発展させ、自由主義的=ブルジョア的な改革派の中途半端さと不徹底を暴露する任務がある。天皇の政府にたいする闘争にさいしては、労働者階級の党は、たとえとの闘争が民主主義的スローガンのもとでおこなわれようとも、断じて傍観していることはゆるされない。共産党の任務は、現存の政府にたいする闘争の過程で、全体的な運動をたえずふかめ、すべてのスローガンを高度化し、 もっとも重要な陣地を獲得することである
 この最初の、当面の任務が解決され、それにつづいて、従来の同盟者の一部がうち破られた階級や層の側にうつりはじめたあとでは、日本共産党は、革命をさらにおしすすめ、それをふかめ、労働者農民ソビエトによる権力の獲得を実現することに、つとめなければならないであろう。党は、プロレタリアートと農民の階級的諸組織を創設し、強化し、拡大することにより、またプロレタリアートの武装を促進することによって、これをなしとげなければならない。したがって、民主主義的スローガンは、日本共産党にとっては、天皇の政府とたたかうための一時的な手段にすぎないのであって、この闘争の過程で当面直接の任務―現存の政治体制の廃止が達成されるやいなや、無条件に放棄されるべきものである。以上の考慮にもとづいて、日本共産党はつぎのような当面の要求をかかげる。

  • 政治的分野における要求
    • 一、君主制の廃止。
    • 二、貴族院の廃止。
    • 三、十八歳以上のすべての男女にたいする普通選挙権。
    • 四、すべての労働組合、労働者政党、労働者クラブ、その他の労働者組織にたいする完全な団結の自由。
    • 五、労働者の出版物の完全な自由。
    • 六、労働者の屋内・屋外の集会の完全な自由。
    • 七、デモンストレーションの自由。
    • 八、自由なストライキ権。
    • 九、現在の軍隊、警察、憲兵、秘密警察、等々の廃止。
    • 十、労働者の武装。
  • 経済的分野における要求
    • 一、労働者のための八時間労働制。
    • 二、失業保険をふくむ労働者保険。
    • 三、市場物価におうじた賃金額の決定。最低生活費の保障。
    • 四、工場委員会による生産統制。
    • 五、雇主および国家は労働組合を労働者階級の公的機関として承認すること。
  • 農業の分野における要求
    • 一、天皇、地主、寺社の土地の没収、すなわち無償収奪と、国家へのその引き渡し。
    • 二、土地のすくない農民を援助するための国家土地フォンドの形成。とくに農民が従来小作人として自分の農具で耕作してきた土地はすべて、私有財産としてではなく用益のために、農民に引きわたすこと。
    • 三、累進所得税、すなわち、所得階段が高まるごとに課税率を大きく引き上げるようなやりかたで、所得におうじた税額をきめること。
    • 四、奢侈特別税。
  • 対外関係の分野における要求
    • 一、あらゆる干渉企図の中止。
    • 二、朝鮮、中国、台湾、樺太からの軍隊の完全撤退。
    • 三、ソビエト・ロシアの承認。

 日本の労働者階級は、統一的な中央集権的な指導部をもつばあいにだけ、現政府を転覆する道を通じてプロレタリア独裁を樹立することをめざすその闘争で、勝利をおさめることができる。若干の革命的分子 (無政府主義者、サンジカリスト、等)がこのような指導部をもつことに反対しているのは、闘争の決定的瞬間にかならず生じるべき全体的情勢を、かれらが理解する能力をもたないためである。この闘争は、おそかれはやかれ、強力な、中央集権化された機構をもつ国家権力との直接の衝突に導かざるをえないのである。この機構を粉砕するためには、革命的プロレタリアートの行動の最大の計画性が必要であるが、それは、意志の統一と組織勢力の統一とによってはじめて達成できることである。だから、日本共産党の当面の任務は、労働組合を獲得し、労働者階級のこれらの組織への共産党の影響力を確保することである。なによりもまず、労働組合運動内になおのこっている黄色的・愛国主義的・社会改良主義的指導者たちの影響をいっさい排除し、労働組合に組織された広範な大衆のあいだで共産党の権威をたかめることが必要である。党は、雇主に向けられたものと国家に向けられたものとを問わず、労働者のいっさいの行動を支持し、労働者の運動ならば、どんなに些細なものでもその指導権を自分の手に確保する義務がある。党は、労働者大衆との強固な結びつきをつくるために全力をあげて努力し、労働者からの孤立をまねく恐れのあることは、いっさい避けなければならない。日本の労働組合内に無政府主義者やサンジカリストがまだ影響力をもっているかぎり、党は、かれらと強固なブロックをつくり、共同闘争の遂行のために協定をむすばなければならない。それと同時に、党は、労働者階級のこれらの革命的分子をたすけて、 かれらのあいだに存在している偏見――闘争の正しい遂行を妨げている偏見を克服させることにつとめなければならない。
 党は、農民、とくに貧農の広範な層に党の影響をおよぼすため、あらゆる手段をつくす義務がある。ブルジョア的反政府運動については、党は、この運動を利用するとともに、その不徹底を容赦なく批判し、自由主義的ブルジョアジーが、労働者階級の運動の成長を恐れてかならず犯すにちがいない裏切行為を暴露する義務がある。
 共産主義インタナショナルの支部として、日本共産党は、プロレタリア独裁をめざすその革命的闘争のなかで、労働者の世界的同盟の旗のもとに終局の勝利――国際プロレタリアートの世界独裁――をめざして前進しつつある革命的プロレタリアートのあの強大な軍隊の一部隊としての自分の義務をはたすであろう。


この文書は翻訳文であり、原文から独立した著作物としての地位を有します。翻訳文のためのライセンスは、この版のみに適用されます。
原文:

この著作物は1925年1月1日より前に公表されたものであるため、アメリカ合衆国においてパブリック・ドメインです。


作者の没年は1938年であり、この著作物は、他の著作権保護期間が80年未満の国においてもパブリック・ドメインです。

 
翻訳文:
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